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むかし、佐久間の人たちが、栃木の古峰ヶ原の古峯神社にお参りに行った時のこと。かやぶきの大屋根がところどころ腐りかけています。「修理してやりたいが、かやがないからな」「おら方にはかやがあまってたのに」と話ながら、その夜は寝ましたが、なぜか一晩中、宿の庭でがやがや人声がしていました。翌朝、庭にはたくさんのかやが積まれています。神主さんが来て、あなたがたの村からかやを持ってきたので修理を頼みますと言いました。その夜夕食には豆腐が出ましたが、みな一口食べて「おらが村の伊三郎の豆腐の方がうまい」と言いました。すると次の日の食事においしい豆腐が出ました。「これは伊三郎どんの豆腐だ」と言うと、神主は「実は伊三郎さんの所から買ってきました。このやかんも借りてきたので、あなたたちから返してください」と言いました。さては古峰ヶ原にいると言う天狗のしわざかと驚きながら、村に帰って伊三郎に聞くと、「見なれない人が豆腐を買いにきたよ」と言いました。