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「柿本人麻呂像」 菱川吉左衛門作 縫箔刺繍画 慶安2年(1649)
万葉の宮廷歌人、柿本人麻呂の肖像と代表歌「ほのぼのと明石の浦のあさぎりに嶋かくれ行舟をしぞ思ふ」の歌が刺繍されています。師宣の父、菱川吉左衛門の地元保田に残った貴重な刺繍作品です。吉左衛門は保田で縫箔刺繍師を業とし、本図からは、吉左衛門もかなり古典に精通し、芸術的才能も高かったことがうかがえます。師宣の才能開花には、父の影響がかなり大きかったと考えられます。慶安2年の制作年代と保田村という地名が入り、吉左衛門の保田での足跡を知る極めて貴重な資料です。