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9.「虚と實 心の裏表」 歌川国芳 弘化4年~嘉永5年(1847~52)
美人の心の裏表を描いた一風変わった国芳の美人画シリーズ。国芳は女性の心情や見栄などを実にうまく表現する絵師で、こうした女性の本音シリーズをいくつか手がけています。この絵は、ちょっときっぷのよさそうなあねご肌の美人。風流に雪見に外に出かけている様子。セリフに注目。「ああ、やっぱり、雪見はいいわねえ。刻々と情景が変わっていく。あら、あそこに都鳥があんなにたくさん、いつまで見ててもあきないわねえ。オホホホ」。と、実はこれは「虚」、つまりウソ。本心は、右上のコマ絵に注目。「おお寒い寒い。ガタガタブルブル。はやくこたつに入って暖まらないと風邪を引いてしまうよ。もう金輪際、雪見になんて行くもんじゃないね」。江戸の見栄っ張りの女性です。